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音声音韻調音点と調音法 母音の分類

記事のレベル;★★☆☆☆

 

はじめに

 人間は言葉を話すときに「さかな」だったり「つる」だったり、何らかの音を出すことで、コミュニケーションをとっていますが、これらの「さ」「か」「な」「つ」「る」という個々の音は勝手に体の中からスピーカーのように湧いて出るわけじゃあないんです。

自分たちが口の中で舌や唇を使って、肺から出てきた「ただの気流」を「加工」することで色々な音色を作り上げているのです。

そう、僕たちはみんな音職人なんです。

表題の「調音点」、「調音法」は子音を発生する時にどのように肺からの気流を「加工」するかということを表しているのです。

また、この「加工」とは、具体的には「気流の妨げ」のことを指しています。母音と子音の違いについてだいぶん前に説明した時にも言いましたが、子音とは「肺からの気流を妨げる」ことで作られる音のことです。

子音とは? 母音とは?

つまり、この「調音点」「調音法」は、子音を発音する時にどのように空気が妨げられるのかということを表しています。

そして、件の「調音点」「調音法」に関しては、

 

・調音点(the place of articulation) → どこで空気を妨げるか

・調音法(the manner of articulation) → どのように空気の妨げられているか

というようになっています。

調音点は空気の妨げれる場所を示しています。

調音点の種類

上記のように、「調音点」とはどこで空気が妨げられるかということを表しています。

音を出す場所

その場所を紹介していきます。

➀唇(labia)

普通に唇を表しています。

②歯(dent)

歯のことです

③歯茎(alveolar ridge)

これも歯茎のことだが、歯のすぐ後ろの付け根から若干盛り上がってる部分のことを指します。

④硬口蓋(hard palate)

歯の後ろの歯茎の若干盛り上がってる部分から後ろに舌でなぞってやると口の中の天井に行きつきます。そこのことです。

⑤軟口蓋(soft palate)

天井を舌でなぞってやると、柔らかい部分に突入します。そこのことです。恐らく舌でなぞるときに舌が短かったら舌先では天井の柔らかい所に届かないので、舌の腹くらいでなぞった方が分かりやすいかもしれません。(筆者は届きません)

⑥口蓋垂(uvula)

いわゆる「のどちんこ」のことです。

⑦声帯(glottis)

喉にある膜の事です。

主にこれらの場所を使って音を発しています。

どこかを狭めて空気の流れを阻害するため、これらの場所を2つ使って狭めないといけません。その組み合わせで発せられる音を調音点というのです。

調音点

➀両唇音(bilabial)

両唇で出す音。日本語のバ行やマ行やバ行の音。

いわゆる、腹話術をするときに邪魔になる音。

②唇歯音(labiodental)

唇と歯で出す音。日本語にはない。英語の/f/の音。学校とかの英語の授業で/f/を発音する時は唇を上の歯で噛めと指導されるのは、英語の/f/が唇歯音だから。実は日本語の/f/とは違う。実際は歯と唇の間で起こす摩擦なので、唇をガブリと噛んでも痛いだけなので、ちょっと隙間が必要。

③歯音(dental)

歯と舌で出す音。代表的なのが英語の”th”音

④歯茎音(alveolar)

歯茎で出す音。歯茎とは言っても普段、戸田恵梨香が笑った時に見えるような歯茎ではなくて、上歯の裏側のことを指す。

④’(後部歯茎音)

歯茎音よりも、もうちょい後ろっ側。

⑤硬口蓋音(palatal)

口の中の天井を上の歯から奥に舌で伝っていくと、ちょっと盛り上がったところがある。そこら辺から、後ろの口腔内の堅い部分全般。わりと範囲は広い。

⑥軟口蓋音(velar)

さらに奥に行くと口の天井が柔らかくなってくる。そこ。のどちんこすれすれの所

⑦口蓋垂音(uvula)

いわゆる、のどちんこ

⑧声門音(glottal)

声門から出す音。

これらの発声器官を下に図を描くとこのようになります。

調音法の種類

一方で調音法は、どのように空気の流れを阻害するのかということを示しています。

➀閉鎖音(破裂音) (stop, (plosive))

空気をいったん溜めて、一気に開放する音。/p/や/t/や/k/の音を想像すると分かりやすい。

日本語では、いったん溜めて、一気に開放(破裂)させますが、日本語以外では必ずしも破裂が伴うとは限らない。溜めのみで終わる言語も多い。英語もその傾向があって例えば”cut”を「カッ!!」って言う人も多い。

②摩擦音(fricative)

上述の調音器官を狭めて、空気の摩擦を起こすことで発生する音。だいたいは「シューシュー」とか「フーフー」音がする。[s]とか[f]の音が該当する。

③破擦音(affricate)

上記の➀閉鎖音+②摩擦音を合わせたような音、記号で書くと[ts]に該当し、日本語の音で行くと「つ」にあたる。英語の複数形の”cats”とかの”ts”もそう。(ためしに、「チ」を長めに発音してみると、いったん空気が遮断されて一気に放出し、その後、摩擦音が続くのが分かる。)

④鼻音(nasal)

鼻から抜く音。通常、鼻音以外を発音する時は鼻から呼気は漏れない。日本語でいうと/m/,
/n/にあたる。鼻が詰まった時に音色が変わることが多い。試しに鼻をつまんで/m/や/n/を発音してみると、なんかイビツな音が出るのが分かると思う。

因みに、鼻音以外の音を出す時、普段は鼻の方に気流がいかないように、喉ちんこがピタッと鼻腔に張り付く。一方鼻音系の音を出す時はそうはならずに喉ちんこが普通の位置にいる。(試しに鏡を見て口を大きく空けながら普通に「あー」って言ってみましょう。その後、「んー」ってやってみましょう。見比べると「おぉー!」ってなりますよ)

⑤震え音(trill)

スペイン語やイタリア語の[r]の音, 他には、関西弁ヤクザの「ゴラ”ァァァァ‼‼いてこますど!」の「ラ”」の音

⑥弾き音(tap)

日本語の/r/の音、日本語のラ行音は英語の/l/とも/r/とも異なる。日本語のラ行は歯裏の歯茎の出っ張りに舌を当ててはじくことで出している。

一方で、英語の/l/は歯裏の歯茎に舌を当てて、そのまま弾かずに息を出し続ける。/r/は舌の先端以外を口腔の天井につけて息を出す。ちょうど舌と天井で「かめはめ波」の形を作ればおk。日本語のラ行は連続して/r/だけを出せないのに対して、/l/, /r/は子音部分だけを呼気が出し続ける限り発音し続けられる。

このことについては、また別記事で書くかもしれない。

⑦流音(liquid)

呼気の妨げがあまりなく、流れるように呼気が口腔から排出される音。英語の/l/, /r/にあたる。⑥で書いたような音。基本的には息が続く限り永遠と発音が続く。

⑧接近音(approximant)

⑥や⑦のような音の総称。

⑨渡り音(半母音) (glide, (semi vowel))

いわゆる、日本語でいうヤ行の音で/y/, /w/の音。「ヤ」「ユ」などの[y]部分、「ウィ」とか「ウェ」とかの[w]の部分がそれにあたる。

 

この「調音点」「調音法」を用いて、もちろん日本語のみならず世界の言語の子音を表してやることができます。

代表的な子音を表記すると次のようになります。

 

色んな子音

閉鎖音(破裂音系)

[p]:パ行の音

[t]:タ行の音

[k]:カ行の音

[b] : バ行の音

摩擦音系

[s]:サ行の音

[ʃ]:「シ」の時の子音の音

[z]:ザ行の音

[ʒ]:「ジ」の時の子音の音

破擦音系

[ts]:「ツ」の時の子音の音っぽい音

[tʃ]:「チ」の時の子音の音っぽい音

鼻音系

[n]:ナ行の音

[m]:マ行の音

[ŋ]:[k], [g]に隣接する時に

震え音系

[r]:イタリア語とかの「r」の音

[ʀ]:フランス語とかの「r」の音

弾き音系

[ɾ]:日本語の「ラ」行の音

流音

[l]:英語とかの/L/の音

[ɹ]:英語とかの/R/の音

渡り音

[w]:日本語のワ行の音

[j]:日本語のヤ行の音

 

阻害音と共鳴音

閉鎖音、破擦音、摩擦音をまとめて 阻害音(obstruent)といいます。

理由は口の中で空気がめっちゃ加工されるから。

それ以外の、震え音、弾き音、接近音、震え音、流音、渡り音だの諸々は共鳴音(sonorant/ resonant) といいます。

これまた理由は単純で、口の中で空気が阻害音よりも「加工度」が低くて、空気が口の中で共鳴するからです。

因みに、日本語でいわゆる「濁音」になる音は全て阻害音です。

共鳴音は基本的には有声音なのです。

有声音と無声音

あと、促音(小さい「つ」)がつく音も基本的には、阻害音です。

「ぺろぺろ」に「っ」を入れてやると「ぺろっぺろ」の方が「ぺっろぺろ」よりも自然に聞こえると思います。

 

他の音素

色々紹介しましたが、もちの論で、世界の言語の音はもっともっと多くて複雑です。

wikiから画像をパクってきました。

めっちゃ多いです。詳しくは→https://ja.wikipedia.org/wiki/国際音声記号

wikiを見てくれぃ!

 

母音の分類

母音は子音と違って口の中の空気の妨げが殆どありません。

なので、破裂だの摩擦だのそういった分類ではなくなります。

母音は空気がダダモレ状態の音のことを指すので、そのダダモレ方で分類してやるのです。

➀口が広く空いて空気がダダモレかそうでないか。

②舌の位置が前でダダモレか後ろでダダモレか。

③口の形が丸くてダダモレかそうでないか。

図示してやるとこんな感じ。

皆さんがよく見るであろう母音を寄せ集めたらこんな感じです。

 

上で紹介した、①②③について図を見ながら読んでください。

➀口が広く空いて空気がダダモレかそうでないか。

母音の「い」と「あ」を発音してみてください。

「あー」と発音した方が、「いー」と発音した時よりも、口の開きが広いのが分かると思います。

それは、「いー」と発音した時の方が、下あごの位置が上がっていて、逆に「あー」という音は口をめっちゃ開けないと発音できない仕組みになっているからです。

そういうわけで、「あ」は母音の中でも口からの空気の出が頗るよくて、他の母音よりも空気の加工度が低いのです。

そういう意味合いで「あ」というのは、キングオブ母音で、実はどんな言語でも母音の「あ」は絶対に存在するのです。

「あ」みたいな口が広く空いているものを「広母音」または「低母音」

「い」のような発音時に口が狭くなる母音は「狭母音」または「高母音」

といいます。

 

次に、

②舌の位置が前でダダモレか後ろでダダモレか。

「いー」と「うー」を比べてみましょう。「いー」って言った時よりも、「うー」って言った時の方が、舌の位置が後ろになっていることが分かると思います。

舌の位置が前にあるものを「前舌母音」

舌の位置が後ろにあるものを「後舌母音」

真ん中にあるものを「中舌母音」

と言います

③口の形が丸くてダダモレかそうでないか。

例えば、「おー」と発音した時「いー」とか「あー」とかに比べて唇の形が円形になってるのではないでしょうか。日本語には母音の数が少ないから実感がないですが、唇が丸まった「おー」と唇が丸まってない「おー」は全く違う音だよとする言語もある(はず)なのです。

唇が丸まる母音のことを、「円唇母音」

唇が丸まらない母音を、「非円唇母音」

といいます。

 

母音の正式名称

上で紹介した「狭母音」やら「前舌」やら「円唇」やらの組み合わせで正式名称を表せます。

非円唇前舌狭母音というと[i]
円唇後舌半狭母音だったら[o]

というように上記のの3属性を③②①の順で書き表してやるとおkです。

日本語では?

先に示した図は一般的な音素の分布を示していますが、すべての言語がぴったりあの通りかというとそうでもないんです。日本語ならこんな感じになります。

5母音ですが、「あ」の位置がかなり中央なのが特徴的です。

あと「う」の音が、「u」じゃなくて「ɯ」なのには理由があります。

「u」は通常「円唇母音」なのですが、日本語の「う」の場合じつは唇が丸まってない「非円唇母音」なのです。(関西弁の「う」は円唇だったりする)

で、「非円唇」の「う」を表す記号が「ɯ」だからこれを使っているというわけです。

 

他の母音について

色々紹介しましたが、もちの論で、世界の言語での母音はもっともっと多くて複雑です。

wikiから画像をパクってきました。

めっちゃ多いです。詳しくは→https://ja.wikipedia.org/wiki/国際音声記号

なんで、おんなじ位置に2つずつ記号があるねんって思うと思いますが、表の下の方に書いているように、左側が唇を丸めない「非円唇」、右側が唇を丸める「円唇」を表しています。

例えば、[y]は中国語の「雨」とかの音ですが、[i]の音のまま唇を丸めていけば、論理的には発音可能なはずです。

 

まとめ

子音や母音の出し方について本記事では書きました。音を発生させるときに口の中でどのようなことが起こっているのか、普段何気なく言葉を話している時は意識することはないでしょう。わりといろんなことをして音を出しているんです、我々。外国語を学んでいる人だったら逆に、「こんな発音どうやってするんだ」という状況に陥ったことも少なくないと思います。辞書にある発音記号を読めるようになると、もっとその言語に対する理解が深まるかもしれません。