音韻論, 音声学 音のエネルギーの階層の話 " />

音韻論, 音声学 音のエネルギーの階層の話

記事のレベル; ★★★★☆

 

ここでは、少し難しい話をします。

以前、母音と子音の違いは発音する時の口腔内での空気の妨げ度、つまり、その音のエネルギーの大きさの違いだと言いました。つまり、母音は発音する時に空気の妨げが殆どなくエネルギーが大きく、逆に子音は母音に比べて空気の妨げが多く、エネルギーが小さい、でしたよね。そして、同様に母音、子音の中にも音によって様々だと以前述べました。この空気の妨げ度がほぼ開口度と一致していて、さらに、音節は口が開いてから閉じるまでの一連の流れだったので、音節を形成する時に、空気に妨げの多い音→中くらいの音→少ない音→中くらいの音→大きい音という順で並べられるのでした。そのため、必然的に空気の妨げが最も少ない部分には母音が来やすいのです。

そして、この空気の妨げが最小で、エネルギーが最大になる音のことを「核」(nucleus)といいます。また、この核の前に来る音にも名前がついていて、「頭子音」(onset)といいます。反対に、核に後続する音のことは「尾子音」(coda)と呼ばれています。

そして、尾子音よりも頭子音の方が優先されます。つまり極端に言うと、子音母音子音母音の連続では、子音母音子音、母音の区切り方にならずに、子音母音、子音母音の区切り方になるということです。

さて、この頭子音、核、尾子音の並び方ですが、これはこの世にあるすべての言語に共通する並び方なのです。また、一般的に核は1つですが、言語によって頭子音、尾子音の数に制限があります英語だと、頭子音、尾子音の両方とも3つまで音を置くことができます。例えば、strengths[strɛŋθs]は[str]が頭子音、[ɛ]が核、[ŋθs]が尾子音となっています。一方日本語は頭子音が1つ、尾子音が0つ(特殊モーラに限り1つ)となっています。「蚊」/ka/だったら、が/k/が頭子音、/a/が核、尾子音なしとなります。ここで、特殊モーラに限り1つといったのは、促音、撥音、長音、二重母音の時には尾子音が1つ許容されるという意味です。例えば、「カッター」/kattaa/の場合は、/k/が頭子音、/a/が核、/t/が尾子音で第1音節、そして、第2音節では/t/が頭子音、/a/が核、さらに/a/も核となっています。このように頭子音、核、尾子音の並びと音の配列はどの言語でも、同じです。他の言い方をすると、この配列こそが人間の言語の本質、根本的なものであると言えるでしょう。逆に、頭子音の数、尾子音の数、核に来れる音は言語によって制限が異なります。このルールが各言語を各言語たらしめる要因の1つなのです。

 

さて、頭子音、尾子音内での音の配列の制限についてお話します。正直、これは日本語にはあまり関係ないお話かもしれません。前述の通り、日本語ではあまり配列を確認することができませんが、英語を見てやると、同じ頭子音、尾子音の中でも配列に規則があることがみてとれます。例えば、/spr/みたいな母音の直前の子音の連続を見てみても、不自然さはないでしょう。実際/spring/や/spray/のような単語にもこの子音の連続は使用されています。では、これらの並びを変えてみましょう。例えば/rps/や/psr/のようなものです。/rps/は母音の直後に位置しているのを見たことがあるかもしれませんが、/rps/にしろ/psr/にしろ母音の直前に位置してるのを見たことはないと思います。

ちなみに子音の連続は子音連続(consonant cluster)と呼ばれています。そのまんまですね。

ここで、先ほど述べた音節のことを思い出してください。音節とは口が開き始めてから最大値となる”核”を経由して、口が閉じるまでの一連の流れでしたね。また開口度はその子音の口の中での空気の妨げ度とほぼ一致しているということも、もう一度思い出してください。

つまり、基本的に音の配置は頭子音→核→尾子音という順に、開口度小→開口度大→開口度小という一連の流れになっていて、更に、頭子音のなかでも、核に近づけば近づくほど、開口度小の子音→開口度大の音という並びになっているということです。同様のことが尾子音にも言えて、同じ尾子音の中でも核から離れれば離れるほど開口度が小さくなっていきます。

では、どの音がどれくらいの空気の妨げがあるんだ?って思うでしょう。それを以下にまとめていきます。

 

子音

阻害音

閉鎖音/破裂音(stop/plosive)

[p] [t] [k] など

破擦音(fricative)

[tʃ] [ts]など

摩擦音(affricate)

[s][ʃ][Φ][f] [v] [θ][ð]など

共鳴音

鼻音(nasal)

[n][m][ŋ]など

流音(liquid)

[l][ɾ][r]など

渡り音/半母音(glide/semivowel)

[w][j]など

母音(vowel)

[i][u][ɪ][ʊ][e][ɛ][a][ɑ]

など

 

上に行けば行くほど口の中での空気の妨げが大きく、音のエネルギーが小さくなります。つまり開口度が小さくなります。

で、そのレベルによってそれぞれ名前がついています。一番妨げが大きいものから、

閉鎖音(または破裂音)→破擦音→摩擦音→鼻音→流音→渡り音(または半母音)→母音

と呼ばれています。

で、空気の妨げが大きめの団体様のことを阻害音といいます。阻害音というと、閉鎖音、破擦音、摩擦音のことを指します。中くらいのものを共鳴音といい、鼻音、流音、渡り音、半母音のことを言います。

 

実はさらに母音の中にも階層があったりして見た目以上に厄介なのですが、今日はこれで許してください。

 

…おい待てよ、前も同じような図を乗せただろ!って感じですよね。

あれは平仮名で表記していました。そのため、日本語にしか適応されません。以前言いましたように、音節の構造はどの言語でもこれまで説明してきたような開口度の一連の流れになっています。今回は主な子音、母音を発音記号で書いているので、他の言語でも適用されるグローバルなルールだと考えてください。なお、これらの発音記号はIPA(International Phonetic Alphabet)と呼ばれる記号で書かれています。

 

※先ほど偉そうにアルファベットで書いたからグローバルだぜ☆といいましたが、ここで記載した音はごく代表的な(主に日本語と英語で使われている)音のみを載せています。全部乗せると情報が煩雑になっちゃうので避けました。詳しく見たい人はIPAと発音記号の関係で!こうご期待!