記事のレベル ★★★☆☆
前記事で、音節の仕組みについて記述しました、続きです。
例えば、”bring”という単語を例にとると、各音の関係は、
“b”がエネルギーの小さな音、”r”がエネルギーの中くらいの音、”i”がエネルギーの一番大きな音、”n”がエネルギーの中くらいの音、”g”がエネルギーの小さな音ということになります。
つまり、➀②③④⑤という音の連続があるとき、➀<②<③>④>⑤という関係になっているということです。
この並びである限り、➀~⑤は口が開き始めてから、閉じるまでの一連の並びになります。
ここで中学校の英語の授業のことを思い出してください。
比較の授業の時に、3音節以上の長い単語を比較級にするときは、’’more’’を単語の前につけましょうと習った経験があると思います。
この時に母音の数=音節数だから、母音の数が3つ以上の時に’’er’’ではなく’’more’’をつけて比較級にしなさいと言われた経験があると思います。
なぜ母音の数=音節数かというと、先ほどのエネルギーの流れの最も高いエネルギーの位置に置かれる音が母音であるからなんですね。
ただし、母音=音節数というカウント方法は危険です。お気づきでしょうか。
たとえば二重母音について考えてみると
“boat”[boʊt]~[bəʊt]という単語は母音数が2つですが、1音節です。
他にも、
“sign”[saɪn]という単語も文字の上では母音が1つですが実際の発音では母音が2つあります。しかしながら、この単語も1音節です。
上記の序列関係を見てもらうとわかる通り、例え、母音が2つ同一単語内に含まれていたとしても、各音の関係は、それぞれ
“b”がエネルギーの低い音、”o”がエネルギーの最大の音、”ʊ”がエネルギーの中くらいの音、”t”がエネルギーの低い音
“s”がエネルギーの低い音、”a” がエネルギーの最大の音、”ɪ”がエネルギーの中くらいの音、”n”がエネルギーの中くらいの音
という口が開き始めてから閉じるまでの一連の流れに組み込まれているため、これらの単語は1音節だとみなすことができます。
実は逆に、母音が無くても1音節と見なされることがあります。
例えば、”apple”[æpl]という単語は、母音が1つですが、1音節ではなく2音節です。
“æ”がエネルギーの大きい音、”p”がエネルギーの低い音、”l”がエネルギーの中くらいの音であるため、各音は、➀>②<③という関係性になっています。
つまり口が一旦開いてから閉じるまでの一連の流れとなるには、本来は➀<②>③という関係性になっていないといけないので、これは1音節ではないということになります。
ここで、整合性を保つためには、➀と②,③を分離してやる必要があります。
そうすると、➀, ②<③ という2音節に分解すると、整合性が保てるでしょう。
すなわち、”æ”がエネルギーの大きい音で1音節+”p”がエネルギーの小さい音、”l”がエネルギーの(pに比べて)大きい音で2音節目と見なしてやれば、問題解決です。
以上が音節の考え方でした。
とにかく、音節とは口が開き始めてから閉じるまでの一連の流れのことを言うのです。
国語の授業で音節なんてきかないし、「じゃあ日本語には音節が無いの?」という疑問が浮かぶかもしれません。
日本語の音節については次の記事でお話しします!
追記; ”apple”、すなわち➀>②<③の区切り方として、上では、➀, ②<③という分離の仕方をしたけれども、➀>②, ③これでも口の開きとしては問題ないだろうと考えられた方がいると思います。それは超鋭い意見です。確かに、言語によっては、そのように分解する言語も存在するのですが、基本的には英語や日本語、その他の多くの言語では、エネルギーの大きい音+小さい音(母音+子音)の組み合わせ、よりも、エネルギーの大きい音+小さい音(子音+母音)の組み合わせの方が好まれるのです。そういうわけで、➀, ②<③になるということです。
また、(母)音単体よりも、2つ以上の音が重なった形の方が好まれます。つまり、子音+母音が最強ということです。
これのことをオンセット制約といいます